2011年3月11日14時46分頃、東日本大震災発生。この出来事を境に、薪ストーブの設置に本腰を入れることになりました。震災前、長野県安曇野市にある製材所で、薪ストーブの暖かさを知り、その後栃木県那須町にある非電化工房にて、薪ストーブに魅了された私。震災後の輪番停電で電力供給が不安定になるさなか、化石燃料以外の熱源を確保する必要性を実感し、自宅に自主施工で薪ストーブを設置しました。
写真を使いながら、当時の施工の様子を振り返ってみます。
薪ストーブの設置場所はバルコニーの直下に位置する一部屋。震災の半年くらい前にセルフリフォームが完了したばかりのお気に入りの部屋でしたが、接場所として適するところが他に無いと判断し、残念な気持ちもありましたが施工を決意。
まずは炉台の製作から取り掛かります。下調べを入念に行い、炉台には10mm程度の空気層の確保を施した上で、石膏ボードと大谷石を敷き詰めました。
次は炉壁の製作です。珪藻土の塗り壁に空気層を設ける為に野淵材を等間隔に固定。その上に石膏ボードと大谷石のタイルを貼り付けます。炉壁の左側には90度の角度を付けた壁も備え、輻射熱から家具を守る設計です。
薪ストーブ本体は、ホームセンターで下調べをして、手頃な価格のものを選定。購入先はコメリのネット通販です。価格は確か、30000円ほど。鋳物製で重量は約50kg。低価格の割にはCB(クリーンバーン)式の二次燃焼機構を備えており、薪の燃焼効率もそれなりに期待できると判断しました。
本当は、ダッチウエストのエンライトを設置したいところでしたが、予算を大幅に超えることから、将来自宅をセルフビルドする時に譲ることとしました。
なお、薪の燃焼効率が最も高い燃焼方式は触媒式のストーブです。白金触媒を使う事で、よりきれいな排気が期待できます。
さて、ストーブを設置する位置を決めたら、天井の煙突が貫通する位置に正方形の穴を開けます。石膏ボードの穴開けにはカッターナイフと回し引きのこを使用します。穴をあけると断熱材が見えるので、それをよけてからバルコニーの穴あけ個所を決めます。この時作業に夢中で写真を撮っていませんでした。
やり方としては、室内側の四角に開けた穴の四隅の直上に4点の穴を、コンクリートドリルを使って開けます。次に、バルコニーに上り、四点の穴を線で結び、石切り砥石を装着したディスクグラインダーで、バルコニーの床を切り込んでいきます。
防水処理用のゴムシートやラス網、モルタルなど、30mm程度の厚さがあるので貫通までにはそれなりの時間を要しました。砥石を1枚交換してようやく貫通した記憶があります。
その後、室内の天井面とバルコニーの床面とを2枚張りの石膏ボードでつなぎ、煙突からの輻射熱から天井内を守るため、全周をアルミホイルで遮熱しました。
板金ばさみを用いてガルバリウム鋼板を加工し、煙突が貫通する穴を開けます。このバルバリウム鋼板をバルコニーにかぶせて、防水処理と防水塗装を施しました。
煙突はこだわりの手作り二重煙突です。煙突を二重にする意味は、煙突そのものの断熱効果を高めることにより、薪ストーブの排煙を、高温を保った状態で煙突トップまで導きくことにあります。これによりスムーズな排気を実現し、ストーブの燃焼を促進させると共に煙突に付く煤を減らす効果があります。
問題は、二重煙突の値段の高さです。シングル煙突と比較して約6倍の価格で販売されています。そこで、自作する方法を考えた結果、150φのスパイラルダクトの中に106φのシングル煙突を納めるやり方を採用しました。
さらに断熱効果を高める為に、スパイラルダクトとシングル煙突の間には、蒸気配管などで使われるラッキング用のグラスウールを詰め込んでいます。ここまで手の込んだ二重煙突は有名メーカーで購入すると、お値段6倍どころの話ではありません。圧倒的なコスパを実現しました。
しかし、反省点もあります。グラスウールの耐熱温度が排煙温度ギリギリだったため、次に施工する時は、ロックウールなど他の素材を検討した方がよさそうです。
煙突は屋根を避ける為に45度の曲がりを2か所設けており、この部分の二重煙突は精密な加工精度を必要としましたが、何とか無事にピタリと納めることができました。
スパイラルダクトの接合にはピアスビスを使い、さらに耐熱性アルミテープを巻いて防水処理を施しています。なお、スパイラルダクトの切断には金切りのこを使用したので時間が掛かりました。本当はバンドソーが良かったんですけどね。
煙突トップは、正規品を購入すると2万円近くの出費になります。そこで一工夫して、約2000円でオールステンレス製の煙突トップを自作しました。使用した材料は、建築資材としてホームセンターでも販売されているステンレス製の排気口と、ニトリで購入した調理器具のステンレスボウルです。
この二つをディスクグラインダーと鉄工ドリルを使って加工し、ステンレス製のボルトナット・スプリングワッシャーで接合。耐熱黒塗装を施して完成です。見た目はまさに高級煙突トップ。10分の1の価格での製作と、今回の施工で最もコスパの高い部類です。
無事に1階から屋根まで煙突の設置が完了し、耐熱黒塗装を施して施工が完了しました。
室内では、煙突の輻射熱を前面に反射させるための反射板兼ヒートシールドを製作。シングル煙突を縦方向に切断してから、直径2.6mmの固めの針金でアーチ状に固定し、ストーブ直上の煙突に、電柱にケーブルを固定する時に使用するステンレスバンドを用いて装着しました。これがあるおかげで、煙突から発せられる輻射熱を有効に活用できています。
さらに、ストーブの背面には庭に埋もれていた厚さ150mmの大谷石を置いて蓄熱効果材とし、その後ろ側にはステンレス製のヒートシンクを配置することでストーブ背面の内装材を輻射熱から守ると共に、ストーブの火が消えた後でも、大谷石から発せらる輻射熱をストーブ前面側に放射させる機能を備えました。
こうして完成した自主施工薪ストーブ。随所に工夫がちりばめられた、唯一無二の仕上がりとなりました。
クリーンバーン燃焼もしっかり機能して、青白いオーロラ状の燃焼を確認することができます。火を見ていると、時間を忘れさせてくれます。エアコンや灯油ストーブとは比較にならない温もりは、薪ストーブユーザーだからこそ味わえる特権。子供も自然と薪ストーブの前に集まります。
天板は様々な調理に活用でき、これまでにさまざまな調理を試みましたが、お気に入りはやはり、焼き芋です。今年は畑で5種類のサツマイモが沢山取れたので、友人も招いて焼き芋パーティーをしようと、今からワクワクしています。
ところで、薪ストーブには燃料となる良質な薪が欠かせません。薪は樹種や乾燥度合いによって、全く異なる火の趣が味わえます。
上手に燃焼できると煙を少なくする事ができますが、薪が湿っていたり、煙道に煤がついていたりすると大量の煙をまき散らして近所迷惑になってしまいます。実際、私も薪ストーブ使い始めの頃は、室内と煙突を何度も往復して燃焼度合いを確認しました。
さらに、ストーブの吸気バルブの開き具合で、燃焼効率も煙の様子も全く異なる結果になります。薪の種類と乾燥度合いと相まって、感覚をフルに働かせて最適な燃焼状態を探っていきます。これが、薪ストーブの面白いところです。
私は、近隣の農家さんの土地で伐採されたクヌギやコナラを燃料にしています。チェンソーはハスクバーナを使い、薪割り用の斧は二種類のものを使い分けています。
気付けば、薪ストーブ歴12年目を迎えます。昨年は、友人宅で薪ストーブのDIY設置をサポートしました。時々薪づくりもやらせてもらっています。薪割りは、座禅や瞑想にも近い効果を生み出すことができる素晴らしいものです。
友人もシーズン2回目の到来を心待ちにしていたので、きっと今年は去年にも増して薪ストーブのとりこになることでしょう。
今度私が施工する薪ストーブは、鋼板を加工して自作する改良型ロケットストーブとすることを考えています。排気の煙突をできるだけ長く取り、煙突の輻射熱をレンガや土に蓄熱させるオンドルの様な構造とし、薪の持つカロリーをより有効に活用します。
合わせて日本伝統の囲炉裏も施工します。囲炉裏は調理をしながら暖をとりつつ、室内の乾燥と防虫に効果がある優れものです。火を囲んでの食事ができるので、家族や友人との絆も深まることでしょう。縄文時代からの文化ですから、きっと生活になじむはずです。
暮らしに欠かせない暖房設備。原始的な薪暖房は、便利で即効性のある近代的な装置にはない、底知れぬ魅力を備えています。燃料費高騰の今、里山の良さが見直されるきっかけとして、薪ストーブが一役買う日も近いでしょう。
薪ストーブの自主施工に関して、何かご質問などあれば、ブログのお問い合わせからご連絡ください。
今日もありがとうございました。