自分で家を建てる方法【建築確認申請はどうする?】

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非電化工房のツリーハウス

この記事を読んでいるあなたは、セルフビルドや増改築を検討しているのではないでしょうか?建築関係者でなくとも、より快適な住まいを求めることは万人に共通していて、もはや欲求の一つと言っても過言ではないでしょう。この記事では、自分で家を建てる際に必要となる「建築確認申請」の壁をクリアするための考え方をご紹介します。

目次

住宅取得費が身体と人生を蝕んでいる

人生の三大支出の一つである「住宅費」。これをいかに抑えるかが、人生の自由度に大きく影響してくる。ちなみに、人生の三代支出は、「住宅費」、「教育費」、「老後費」である。

老後が不安だから、貯蓄したり保険に加入している人は多いと思う。教育費は、子供の将来がかかっているから極端な節約が難しい。そして、住宅の質はQOLに直結するから、これまた極端に節約することは難しい。

だから、35年間の住宅ローンを組んで住宅を購入する訳だが、返済が滞ることを避けるために嫌な仕事でも無理して続けるようになる。すると、ストレスが原因で体調を崩し、住宅の所有が原因でQOLが下がるという相反する状況に陥る。住宅を持つことによるストレスは、気付かぬうちに身体と人生を蝕んでいるともいえる。

セルフビルドに立ちはだかる「建築確認申請」という壁

住宅を確保するにあたっては、もう一つの選択肢がある。それは、自分で家を建てるセルフビルドという選択肢である。セルフビルドといっても、全ての工程を1人やるのではなく、要所要所で仲間や専門職の力を借りても良い。

しかし、実際にセルフビルドしてみようとするといろいろな壁が立ち塞がる。その中でも、建築基準法という法律の壁が高く、どうクリアしていったら良いのかで悩むだろう。私もその1人だ。なぜなら、建築にかかる知識と技能は、ある程度のレベルまでなら訓練して習得できるが、法律を自分の力で変えることはほぼ不可能だからだ。

自分で安く快適で安全かつ素敵な家を創意工夫して建てようとすると、様々な建築工法が候補に入ってくる。でも、建築基準法では認められていない工法では、建築確認申請を通すことができず、行政の建築許可が降りない。自分の土地であっても、自由に建築することが許されていないのが、日本という国家である。

しかし、栃木県那須市にある非電化工房工房には、個性的で魅力的なセルフビルド建築物が複数ある。実は、私がここを初めて訪ねたのは、確か2010年くらいだったと思う。ストローベイルハウスの小屋を建てるワークショップに参加するためだった。その後2011年に、非電化工房の「地方で仕事を創る塾」の塾生となった。

私は仲間とセルフビルドで住居を建てる計画を持っているが、「はて?非電化工房の建築物は、どうやって建築基準法による建築確認申請をクリアしたのか?」ということが、調べても調べてもよく分からない。2023年8月、この長年の疑問を解決すべく、12年ぶりに非電化工房代表の藤村靖之さんを訪ねてお話を伺ってきた。

建築確認申請をクリアする方法

まず先に結論を。

結論:建築確認申請?そんなもの気にしない気にしない(特に田舎では)

え?なにそれ?と思った方も多いと思うが、誤解を避けるためにも、この結論に至った理由をこれから解説していくので、ぜひ最後まで読んでほしい。

先に述べたように非電化工房には、個性的で魅力的なセルフビルド建築物が複数ある(写真はその一部)。

非電化カフェ外観
非電化カフェ内装
非電化温室
コブハウス

建築基準法によれば、都市計画区域内において、10平米以上の建築物を建てる場合は建築確認申請が必要とされている。また、10平米未満の建築物であっても、一筆当たり1件までしか建てられないことになっている。

ところが、非電化工房工房の建築物は、見れば見るほど建築確認申請を通すことは難しいと思われる構造だ。「なぜ立っている?」という疑問が、現場に行ってさらに増幅された。

藤村さんの軽快なトークがひと段落して、質問できる空気感になった瞬間に、私は質問した。

「建築確認申請は、どのようにしてクリアしたのですか?」

すると藤村さんは、待ってましたと言わんばかりに、法律との向き合い方からお話をしてくれた。何でも、藤村さんは法律を2種類に分別して、白黒ハッキリさせて対応しているという。その、2種類の法律とは次のとおりである。

1.弱い人を守るための法律
2.利権を守るための法律

そして、1は積極的に守り、2は積極的に破りにいく、と言うウイットな表現で次のような話をしてくれた。

日本には、シックハウス症候群や化学物質過敏症により生活が困難な人たちがいる。1990年代にシックハウス症候群が社会問題となり、ホルムアルデヒドの室内での放出を抑える必要性が問われるようになった。

そして日本政府は2003年に建築基準法を改正し、新築で住宅を建築する際には、各部屋に24時間換気システムの設置することを定めた。これは、建材から揮発する有害なガスを部屋外に出す為に設けられたものだが、自然素材を使って、ホルムアルデヒドが放出される心配の無い家を建てたとしても、24時間換気が適用される。

藤村さんいわく、海外でこの法律のことを話すと首を傾げられると言う。なぜならば、諸外国ではホルムアルデヒドを発する建材の製造と使用自体を禁止しているため、換気をする必要がないからだ。

日本の法律の多くは、企業の利益・利権を守るために存在するから、どうしても弱者(貧困、病気、子供、老人)に対して不利な作りになっている。

24時間換気システムの義務化に関しても、お金のない弱者にとっては、かなりの経済的な負担になる。その反面、24時間換気システムの製造流通にかかる企業は儲かる。

一方で、立場の強い人(政治家、起業家、金持ち)は、悪徳弁護士や税理士を雇って、合法的にあらゆる手段を尽くして税金から逃れている。

このように、黙って従順に法律に従っていると、弱者はどんどんと不利な立場に追いやられてしまう。24時間換気システムはその一例である。

話を建築基準法に戻そう。結局、建築基準法は利権を守るための法律であるから、積極的に破っていくのが推奨される姿勢ということである。さらに建築基準法は、破ったところで罰則はない。

では、現実に建築確認申請をしない建物を自らの敷地内に建てた場合、どのような支障があるのだろうか。

実は、法律では建築物は財産に当たる。財産は所有者による財産権があり、憲法の規定によりこれを侵害することはできないから、違法建築物といえども所有者の同意なしに行政機関が勝手に取り壊すことはできない。

また、当該建築物で生活を始めていれば、生活権に基づいて、やはりこれを侵害することはできない。やはり、所有者の同意なしに勝手に取り壊すことはできないのである。

ピザ釜、ショップ棟
案内板もオシャレ

こうした理由から非電化工房では、非電化カフェも含め建築確認申請は行なっていないらしい。

ちなみに、カフェとしての営業に関しては、食品衛生法に基づく「飲食店営業許可申請」を保健所に提出する必要があるが、許可において建築確認申請の有無は関係ないらしい。

ただし、セルフビルド建築で自由にやるとはいえ、安全上の配慮は欠かせない。シロウトが作るものだから、単純な作りにすることや、大きなものは作らないことなどの工夫は必要となる。大きくしたい場合は、小さいものを組み合わせて作るのがおすすめとのことである。

また、建築業を営む人が違法建築するのはマズイ。この点、非電化工房の建築物は素人が建てたものだし、田舎では自分でちょっとした小屋を建てることはよくある話なのだそう。

ちなみに、国内随一の違法建築マンションをご存知だろうか?その名は「沢田マンション」。高知県高知市の街中にあるマンションだが、驚くべきことに、素人の夫婦が独学と自力で10階建て100世帯の巨大なマンションを建築し、50年の時を経た今でも、たくさんの入居者がいる。沢田マンションの例からしても、違法建築といえども、人が住んでいる以上は勝手に解体することはできないのだ。

と、いうことで建築確認申請をスルーしても大丈夫ということは分かったが、そうとはいえ、周辺住民の目や行政機関からの圧力などに耐える気概は必要になるだろう。それを差し引いても、建てたいと思えればやってみれば良いと思う。

固定資産税はどうなる?

実は、建築確認申請をしていなくても、固定資産税は発生する。非電化工房には、役所の固定資産税評価担当の職員が毎年訪ねてくるそうだ。

職員は、昨年の航空写真と比べて新しい建物が増えていることをチェックしてからやってくる。建築物は固定資産だから、固定資産税を払ってくださいという。すると、藤村氏は職員を少しからかうようにして対応するそうだ。

玄関先で職員は、木造の新築で20平米だから〇〇円の税額になると言う。

しかし、藤村さんは1枚上手だ。どういうことかというと、本来の法律の趣旨からすると職員の言い分は誤っていることを知っているからである。どういうことかというと、そもそも固定資産税は、資産の評価額に対して支払うものである。非電化工房の建物は、人件費はゼロな上に廃材を使っているので経費はかかっていない。誰もこんな建築物を欲しがらない。だから、資産価値としてはゼロである。資産価値がゼロならば、固定資産税など課税のしようがないではないか、という論理である。

先ほど職員が算出した評価額はあくまでも一般的な評価額であり、本来は、個別に評価しなければ、税額は確定できないのである。

すると職員は、固定資評価額がゼロの建物はないから困るのだという。そんなやりとりをした後に、仕方がないから五千円かかったことにしておくから、それでどうだ。ということで手を打つ。すると職員は、「ありがとうございます。」言うのだそうだ。

固定概念や常識に囚われない柔軟な思考が自由を司る

沢田マンション外観

藤村さんは50年以上もの間、発明家として活躍してきた。発明家は常に新しい価値を生み出し、世の中に示していくことが仕事だから、特に法律の壁にぶち当たることは多い。そもそも、法律は既存の枠組みに対して規制するものだから、既存ではないものに対しては規制できないものである。だが、業界団体や企業等の既得権益に害を及ぼすような発明となると話は別で、新たに作り出したものや仕組みに対して、後付けで法令を作って規制されたりすることがある。藤村さんは長年、こうした問題と戦ってきたのだ。だからこそ、建築確認申請の話にしても説得力がある。

今では誰もが知っているであろうログハウスも、国内で最初に建てたのは素人だった。ログハウスは、その見た目の斬新さから別荘地を中心に人気となったが、当時の建築基準法によれば立派な違法建築物だった。ところが、あまりにもたくさんの違法建築ログハウスが建てらるものだから、当局は建築基準法にログハウスの基準を規定したのだった。

もしかすると、国民の多くが自由に家を建て始めれば、法律が後付けで変わるかもしれない。現在の建築基準法は、明らかに業界団体の利権が国民の権利よりも優先されている。この現状に異議を唱える意味でも、セルフビルド建築を違法に建てる意義はあると思う。

こうして藤村さんのお話を振り返って考えてみると、セルフビルドにしても何をやるにしても、結局のところ「その人の思いがどれだけ強く、覚悟があるか」というところに尽きるのだと思う。達成したい目標を何がなんでもやるという強い覚悟と信念さえあれば、家でもマンションでも建てられるのだ。

エンライトはセルフビルド建築をする予定があるので、建築確認申請の壁のクリアの仕方を聞けたのは大きな収穫だった。

法律は守るためにあるのものではなく、守るべきものを守るために、上手に付き合っていくものである。

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エンライトは、似たような価値観を持つ仲間と共に、新しい暮らしの形を作ることを目指しています。それは、日々の暮らしが遊びであり、学びであり、働くことでもある、「遊暮働学」というライフスタイルです。

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この記事を書いた人

千葉県我孫子市出身/二児の父/人生の経営者として生きる40代パパ/手作り生活研究家/里山料理研究家/halu農法・創命農法実践家/薪割りマスター/薪ストーブ活用アドバイザー/住宅断熱アドバイザー/自然エネルギー活用コンシェルジュ/ブログ「縄文生活」運営/電気工事士/ワークショップ講師/
20歳の時にペンション・シャロムヒュッテの臼井さんとの出会いに衝撃を受け、何でも作ることのできる人になることを意識するようになる。3回の転職と日常生活での実践を経て、電気・建築・木工・溶接・配管、金属加工・陶芸・農・野草採取・料理・ワークショップ講師など、生活全般を自給自足できる技能を習得。想像し、アイデアを形にすることが得意。
コロナ禍と友人の死をきっかけに、「人生を主体的にデザインする生き方」、「そこそこの人生から最高の人生へ変化する」ことを強く意識するようになる。
現在の目標はセルフビルドで自宅を建築すること。理想は、誰もが自らの能力を活かし、家族や仲間と共に愉しく暮らせるコミュニティーで生活すること。縄文時代の英知に現代のテクノロジーを融合させたライフスタイルを日本の文化にすることを目指す。

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