井戸。それは自給自足に欠かせない必須アイテム。
先日、里山にある友人宅の敷地内の井戸を、約10年ぶりに復活させることができました。
この井戸は2011年に発生した東日本大震災の際に、近隣住民の命を救いました。
震災当時、原発の稼働停止の影響により停電が頻発。
近隣は山林と農地がメインで、食料や燃料に困る事は無い環境でした。
しかし、肝心の水はどこも使いえない状態。井戸を設置した住宅もありますが、動力源はどこも電気です。
停電すれば当然にポンプは稼働しませんから、たちまち水に困ってしまったという訳です。
当時の友人宅は別のオーナーが所有しており、別荘として使用していたそうですが、震災後は別荘に訪れることがほとんどなかったとのこと。
停電が相次いだ時期もオーナーは不在の状態でしたが、近隣住民はこの井戸を使うことで水を得ることができました。
この井戸には手押し式のポンぽが設置されており、子供の力で水をくみ上げることができます。
そして停電も治まり、日常生活が戻ってくると井戸は使われなくなり、朽ち果てて現在にまで至りました。
現在のオーナーの友人がこの物件を引き継いでから、敷地内の整備が着々と進んでいます。私も時々お邪魔して、薪割りや焚火、子供の工作や農作業など、大変豊かな時間を共有させてもらっています。
季節は夏を迎え、子供たちが思う存分に水遊びができるように、懸案だった井戸ポンプの修理を実行しました。
井戸の構造は大変しっかりしており、ここまで重厚なつくりにする必要があるのか?と思うほど。
さて、修理業務は上記の3段階を踏まえて取り組む事が基本です。
・まずは現地調査(「現調」とも言います。)
・次に部材の選定
・そして施工
友人のお宅は私の自宅から車で3時間程度かかるところにあります。このため、現地調査は漏れなく正確に行う事が求められます。
次に部材の選定。
ポンプの機種は、川本ポンプのHT35。
インターネットを使ってポンプの構造図面を入手し、木台の穴あけ加工を自宅で行いました。
穴あけ加工に使ったのは木工用ホールソー。Amazonで3000円程度で購入しました。結構使えます。
穴の直径は70mm。既設の塩ビ製バルブソケットがすっぽりと収まる直径で合わせています。
井戸ポンプは雨風に晒され木台が腐りやすい環境です。なので防腐塗料も塗り込みました。
ポンプ本体は鋳物製で、中はさび付いた状態。これは友人が時間をかけて磨き上げ、良好な状態に仕上げてくれました。
また、ポンプの中に入っていた木製のコマは跡形もなく朽ちており、フランジに取り付ける弁付きガスケットもコチコチに固まっていたので、Amazonで新しく購入。
材料がすべて整い、いよいよ現地での取付作業です。前日までの大雨も奇跡的に上がり、熱くもなく絶好の作業日和。
まずはコンクリート製の重たい井戸の蓋をけてみようという事になり、二人で蓋を持ち上げると・・・
ぎゃー!!なんじゃこりゃ!!
余りに気持ち悪い光景に大きな声を上げてしまい、子供達もびっくりして集まってきました。
そう、これは「カマドウマ」。しかもバカでかい!人生でみたカマドウマの中で一番大きくて遠くまで飛び跳ねる。密閉された空間の中に数百匹はいる様子。一体何を食べて生きているのだろう。これは子供の夏休みの自由研究にうってつけのネタを見つけたか?などと話しながら、作業にもどります。
ところが、さび付いたフランジがなかなか外せない!そこで役に立ったのはシャベル。やっぱり持つべきは農機具と農の知識と技能。百姓最強です!
無事にフランジを外したら、バルブソケットにこびり付いたシールテープをワイヤブラシとドライバーを使って取り外した後、新たにシールテープを巻いてフランジをねじ込みます。
なかなか手の込んだ造りで、フランジやボルトを取り付ける手順を二人で試行錯誤しながらの作業。
途中何度か手戻りしながら、無事に木台とポンプ本体を取り付けました。
ポンプの心臓部である弁付きピストンは、木部を新品に交換して、金属部分は磨いた後に亜鉛メッキ塗装で仕上げました。
なんとこの部品、楽天で新品一式10,230円で販売されていました。木部だけなら2000円程度で済みます。
さて、ここまでくればあと少しです。
ポンプにバケツで呼び水を入れてから、いよいよ手動のレバーを上下させます。
バシャ!という勢いの良い音と共に、約10年ぶりに井戸が復活した瞬間です。
皆総出で、ポンプの復活を祝しました。こうして何かを共同作業で作り上げた時にこみ上げてくる喜びは何物にも代えがたいです。昔の人は、こうした日常生活での些細な出来事が大きな喜びであったのかもしれません。
井戸の修理を終えてみて
自分たちで生活を創っていく幸せを知ることは、とても大切な事だと思います。お金があれば、欲しいものをポンと買って、一時的に満足することもできます。ですが、お金がいくらあっても買えない経験があります。むしろ、お金を掛けずに時間を掛けて仲間と共に作っていく事で得られるものの方が、幸せかもしれません。
私はこうした手作りの生活にある、些細な幸せの累積が、人生の豊かさを決めるような気がしています。都会を離れ、程よい田舎で自給自足的な暮らしをすることに憧れをいだくことは、こうした考えによるものです。
はるか昔、縄文時代は1万年以上も継続し、人類史上類を見ない繁栄を遂げていました。当時の人々は現代の様な科学技術を持っていませんでしたが、縄文土器というクリエイティブな実用品や装飾品を作り、季節に応じた豊かな食を楽しみ、自給自足的に協力し合って暮らしていたことが想像できます。
見方を変えると現代人は、縄文時よりも生活の豊かさが薄れているのかもしれません。日本人には縄文人の遺伝子が引き継がれています。その遺伝子があるからこそ、1万年続くような次の時代を造っていけるはずです。
縄文時代の英知で豊かに生きる。今日もその想いを強くしたのでした。
最後までお読みいただい、ありがとうございました。