8月下旬頃に「令和の米騒動」がニュースで話題となりましたが、新米が出てきて落ち着きを取り戻しましたね。
しかし、スーパーのお米売り場に行くと、どこか違和感が。
そう、販売価格が随分と上がりました。昨年は5kgで千円台だったと記憶していますが、今は三千円以上と、ほぼ倍の価格になっています。
値上げの動きは飲食店にも波及し、ガストなどを運営する、(株)すかいらーくホールディングスも、米の提供価格を改定し、値上げします。
食料政策は外交の要
米作りの担い手の高齢化は進み、国内消費分のお米の需要さえも賄えない事態が目前に迫っています。需要が供給を上回り、不足分は他の食材と同様に輸入に頼ることになりますが、米は主食の食料です。減反政策も変わる様子はありません。
このまま主食を輸入に頼っていく流れで良いのでしょうか?
現在、ドル円の購買力平価は過去最低の水準で、輸入にかかるコストは過去最高に高くなっています。10月には多くの食品で値上げが実施されました。生きていくためには食べ物が必要です。主食さえも輸入に頼るということは、輸入が停止すると国民は生死を彷徨うことになるということです。
人口が増加傾向にある国々は、食料需要も増加します。人口が増加して国力が上がると食料の輸入も有利になりますが、日本はその逆です。国力の低下に伴い、輸入品目によっては外国に買い負けするケースも出てきています。
また、食料を輸入に頼ることは、外交交渉面でも不利に働きます。もし、他国が日本向けの食料の輸出に制限をかけることを外交交渉のカードに使われたとしたら、多少不利な条件でも飲まざるを得ません。
1941年12月7日、当時の大日本帝国は、ハワイの真珠湾を攻撃を皮切りに、第二次世界大戦へと突き進みました。この背景には、欧米列強によるABCD包囲網により日本への輸入が停止し、国全体が秤量責めに遭っていたことも大きな要因です。
それでも当時は米を100%自給していました。日本政府は、主要食糧の受給及び価格の安定に関する法律に基づき、「備蓄米制度」を運用していますが、国内消費量の3ヶ月分程度の備蓄しかありません。もし、食料の輸入が停止するような事態が起きたとすれば、厳しい状況になることは容易に想像できます。
米作りを体験して得た気づき
ここまで、厳しいことを書いてきましたが、じつは縁来人は、そうした危機感を元に米作りを始めたわけではありません。
「暮らしの中で必要なものは、なるべく手作りした方が幸福感が向上する」ことを知っているので、できれば、毎日食べるお米も自分達の手で作ってみたいというのが実際の動機です。
そんなことを考えていた今年の2月。ちょうど仲間の1人から米作りのお誘いを受けました。二つ返事で米作りをすることに決めました。安心安全な玄米を作る経験ができるまたとない機会です。
ちょうど良い具合に、米作りをやらせていただく田んぼは数年以上耕作放棄されており、昨年、整備して田んぼを復活させた圃場です。この圃場での米作りでは一般的な施肥は行わず、代かきの際に竹炭、籾殻燻炭を混ぜるのみで、その他のものは田んぼに入れません。もちろん無農薬で、草の管理は人力で行います。
苗の一部は籾から発芽させ、代かきも大半は手作業で行い、ジャンボタニシの食害と闘いつつ、草刈りをこまめに行うこともままならかったのですが、田んぼの近くに住む仲間の尽力により、無事に実りを迎えることができました。
刈り取りは全て手作業で行い、一束づつ手で縛って、山から切り出した竹で組んだ架台にハザ掛けして天日干ししました。10月中旬には、脱穀を終えて玄米を袋詰めして完成となる予定です。完成したお米のレポートは、改めて行いますね。
ところで、米作りに関わる中で、様々な気づきと学びがありました。
まず、自給自足に興味がある人は一度は米作りを経験した方が良いということです。
お米は買ってくれば簡単に手に入りますが、自分たちで作る経験を買うことはできません。側から見れば非効率な活動の様に思われるかもしれませんが、非効率であるが故に工夫の余地があります。ここに、米作りの楽しさがあります。
また、米作りは畑での野菜の栽培と異なり、複数の仲間と協力して行う必要があります。特に、無農薬で栽培する場合は除草にかかる労力は大きいです。日々の水の管理も適切に行う必要があります。これらの作業を一人で行うことは、圃場の面積が大きいほど難しくなります。
他にも、細かな気づきと考察があります。例えば、ジャンボタニシという外来種のタニシは、田植えをしたばかりの苗を食べてしまう厄介者ですが、田植え直後の水深の管理や、田植えに使う苗の成長具合を工夫することで、その後の草取りの手間を大幅に削減することが可能になります。
また、ジャンボタニシが食べた草の排泄物は、田んぼに養分を供給します。これが、有機肥料の役割を果たすのではないかと推測しています。なぜなら、ジャンボタニシの生息数が多い田んぼとそうではない田んぼとの間では、稲の分けつ数と稲穂の垂れ具合に明らかな違いがあったからです。
来年はこうした経験を元に、農薬を使わずとも、管理の手間を軽減し、収量の向上も狙えるのではないかなど、工夫することの楽しさが尽きないのです。できたお米を食べたら、さらにやる気が湧くことでしょう。
こうした感覚は、やってみて初めて分かるものです。経験に勝る価値はありませんね。
お米の試食とお話し会
執筆時点ではハザ掛けの途中で、脱穀を一週間後に控えているところです。脱穀をした後、直ちに米袋へ納めて完成する予定です。仲間と手作りしたお米を口にするのが、本当に楽しみです。
今年は、一反の田んぼで米作りをしました。一反がどれくらいの面積かというと、だいたい、50mプールと同じくらいの面積です(50m×20m=1,000㎡ )。
今年は田んぼの半分か3分の1程度がジャンボタニシの食害で苗が定着しなかったため、実際に作付けできた面積は5〜6割程度です。一般的な慣行栽培の一反部あたりの収穫量が 600 〜 800 kg と言われていますが、この田んぼでは、それよりも少ない、300kg弱になることが見込まれます。
さて、できたお米は仲間と分けるのですが、ブログの読者さんの中で興味のある方に向けて、試食会を行いたいと思っています。できれば、玄米を炊いたものと、炊き立てのキラキラした白米の両方を楽しみたいですね。読者の皆様との交流が楽しみです。
どこか、調理室のある場所を借りて、ご飯を炊いてみましょうか。こんな時のために、いつでも自由に使える場が欲しいところですが、まだ、その様な場が確保できていません。
なので今回は、公民館や民営の調理室を使うことになりそうです。タイミングが合えば野草も採取しておいて、当日調理して振る舞いたいところです。
将来的には、焚き火ができて、ワークショップができる屋根付きの工作スペースがあり、周辺に里山があるようなフィールドを確保したいのです。そのような場所を探しています。
10月の縁来人はイベント続きですが、試食会の開催が決まったら、メルマガとfacebookでお知らせします。
それでは、また!