【DIY】ウッドガスストーブの作り方

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エネルギーの自給にはさまざまな方法があります。中でも木質バイオマス系の燃料は、都会でもない限りそれなりに手に入りやすいエネルギー源と言えます。部屋を丸ごと暖房するためにはかなりの量の薪が必要ですが、煮炊きをする程度のエネルギーであれば、それほどの労力を掛けずに手に入れることができます。

何らかの災害で電気やガスも止まってしまった場合でも、身の回りに落ちている枝や木クズなどを燃料として活用できる術を準備しておくことは大変重要です。しかし、普通に焚火で煮炊きをする場合は効率が悪く、時間もかかります。なにより燃料の消費量も多めです。少量の燃料で効率的に調理するためには、それなりの工夫が必要です。

目次

薪・枝を利用する燃焼器具の種類と課題

日本には、七輪という大変効率の良い調理器具があります。天然素材である珪藻土などの断熱性に優れた素材で成形加工された七輪は、熱効率がとても高いです。その一方で主たる燃料として炭を使うため、炭が無い環境下では少々使いづらい欠点があります。

農家で良く見かける羽釜を置くための携帯用かまども有効です。ただ、かまどの鍋置きの直径が40cm程度と大きく、少量の湯を沸かしたり、フライパンで炒め物をするといった調理には向きません。

七輪
移動式の羽釜

一方でキャンプで使われる焚火台は、熱が放散される構造であるものが多く熱効率は低い製品が多いです。そんな中、効率よく燃焼するように工夫されたキャンプ用燃焼器具も見かけるようになりました。それは、「ウッドガスストーブ」と呼ばれるものです。

ウッドガスストーブの特徴としては、一次燃焼で燃え切らなかった可燃性ガスを二次燃焼によって燃焼させることで、燃料の持つ熱量を効率よく熱として利用するというところにあります。二次燃焼は燃焼器具の構造を工夫する事で実現できますが、一番のポイントとなるのは二次燃焼用の空気の吹き出し位置と温度です。市販されているものはこうしたポイントの他、携帯性や強度、価格などのバランスの取れた製品に仕上がっています。

ちなみに薪ストーブにも二次燃焼の機構が備わった製品があり、「クリーンバーン方式」と呼ばれるものが該当します。薪ストーブの豆知識は別の記事に譲るとして、本題に戻りましょう。

自作ウッドガスストーブの構造

自作ウッドガスストーブの断面構造図

今回私が自作したウッドガスストーブは、燃焼効率の高いものを如何にコストを掛けずに作るかということをテーマにしました。そうして出来上がったものが、冒頭の写真に掲載したエビスビールの缶とトマト缶で作った、世界で一つしかないウッドガスストーブです。他に使用した材料は、お菓子の缶の二タ、ガルバリウム鋼板の端材、グラスウールの端材、針金、割れたレンガ、ネジ類、廃棄処分の際にとっておいたガスレンジの五徳です。つまり、材料費はほぼゼロ円です。

構造は随所に工夫が盛り込まれています。まず、火力調整ができるように空気取り入れ口を開閉式にしました。これは市販のウッドガスストーブにはない機能です。この機能があれば、ガス火のようにまでとはいかないものの、ある程度の火力調整ができます。自作したウッドガスストーブの構造図を作りましたので、ご参照ください。

次に、二次燃焼用の空気温度を上げる目的で、内側の缶と外側の缶との間に断熱材のグラスウールを入れています。さらに、缶底には割れたレンガを配置して、レンガの蓄熱効果により一時燃焼及び二次燃焼温度の上昇を促すとともに、ストーブ本体の物理的な安定性の向上を実現しています。

製作過程のご紹介

製作過程を写真と解説でご紹介します。まずは、エビスビールの缶のフタに燃焼口を作ります。使った工具は、電動ドリル、ホルソー(φ20)、板金ばさみ。

エビスビール6缶入りの外缶。見た目も豪華。
ケガキの後にホルソーで穴あけ
板金ばさみで内側を切り取り
内側缶を固定する為の切込み
切込みを入れ終わった裏側の様子

続いて、内側に収める缶の加工を行います。使用する材料はトマト缶と針金。使用工具は電気ドリル、鉄工用ドリル歯(一次燃焼用空気穴:φ6、二次燃焼用空気穴:φ4)。

穴あけ個所をマジックでマーキング
ポンチを当ててドリルポイントを固定
穴あけ完了

内側の缶の外側に空気余熱層をつくる為、ガルバリウム鋼板で10mm程度のクリアランスを確保。さらに内側缶の外側にグラスウールを巻いて外側缶のフタに針金で縛って固定。

内側缶に空気余熱層を設ける
外側缶のフタに固定

缶底にレンガを配置して、外側缶に空気取り入れ口を加工。使用した工具は電動ドリル、ホルソー、板金ばさみ。使用した材料は、割れたレンガ、ガルバリウム鋼板、ボルトナット(M4)。内側缶の二次燃焼用空気穴は、吹き出し方向が反時計回りになるように角度をつけて、炎がトルネード状に燃え上がる工夫をしました。

スライド式の構造
蓄熱用レンガの設置
スライド全閉の様子
トルネード状の炎が鍋の底面を安定的に捉えるようにした

DIYは楽しい

こうして随所に工夫をちりばめて作ったウッドガスストーブは、木くずや松ぼっくりなどの身近な素材を燃料として、しかも少量でお湯を沸かすことができる上、火力調整機能により調理も快適です。作る手間はかかりますが、イザという時やキャンプでも使えます。そしてちょうどよいことに、エビスビールの缶には元々取っ手が付いていたので、携帯性にも優れています。畑で大根を茹でたり、サツマイモを吹かしたりするのにもちょうど良いですね。

イメージしたものが実際に機能してくれると嬉しいものですし、作って使えるのは楽しいものです。壊れてしまっても自分で直せることも大きなメリットです。今回はウッドガスストーブのDIYでしたが、別の機会で「ロケットストーブ」という燃焼器具も作ってみようと思います。こちらは、ウッドガスストーブよりも火力が確保しやすく、燃焼効率もウッドガスストーブに引けを取らないくらいに高いものです。

自作のウッドガスストーブをキャンプ場で使っていたら、「作ってみたい」という人や、「どこで売っていますか?」などと聞かれることがあったので、意外とニーズがあるのかもしれません。今度、自作ウッドガスストーブのワークショップを企画してみてもおもしろそうですね。

今日もありがとうございました。

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この記事を書いた人

千葉県我孫子市出身/二児の父/人生の経営者として生きる40代パパ/手作り生活研究家/里山料理研究家/halu農法・創命農法実践家/薪割りマスター/薪ストーブ活用アドバイザー/住宅断熱アドバイザー/自然エネルギー活用コンシェルジュ/ブログ「縄文生活」運営/電気工事士/ワークショップ講師/
20歳の時にペンション・シャロムヒュッテの臼井さんとの出会いに衝撃を受け、何でも作ることのできる人になることを意識するようになる。3回の転職と日常生活での実践を経て、電気・建築・木工・溶接・配管、金属加工・陶芸・農・野草採取・料理・ワークショップ講師など、生活全般を自給自足できる技能を習得。想像し、アイデアを形にすることが得意。
コロナ禍と友人の死をきっかけに、「人生を主体的にデザインする生き方」、「そこそこの人生から最高の人生へ変化する」ことを強く意識するようになる。
現在の目標はセルフビルドで自宅を建築すること。理想は、誰もが自らの能力を活かし、家族や仲間と共に愉しく暮らせるコミュニティーで生活すること。縄文時代の英知に現代のテクノロジーを融合させたライフスタイルを日本の文化にすることを目指す。

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